音楽活動における重要ポイントのひとつが「自分を安売りしない」という意識です。覚悟といってもいいかもしれません。
安売りしない・・・じゃ、高く売ればいいのか?と言われれば答えは「YES」です。しかし、高いギャラをいただく、という意味ではないことに注意してください。
自分を安売りしてしまうと、音楽活動そのものに疲弊してしまいますので、「安売りしない!」と確固たる信念をもって活動することはあなたのためであり、あなたを応援してくれるファンの方のためでもあります。
自分の安売りとは
まず、「自分の安売り」とはどのような状態でしょうか。
冒頭で、ギャラのことではない、と述べましたが、”あなた自身の価値”を安く見積もられてしまうことが自分の安売りです。
たとえば、
- 歌う場所は用意するからお客さん呼んで適当にやってね
- お金払ってくれれば歌わせてあげるよ
- イベントやるからあなたのお客さん呼んでよ、歌っていいから
といった、「あなたである理由がないオファー」や「あなたの持っているものにタカってくるオファー」と考えればわかりやすいでしょうか。要するにあなたを応援する気持ちがないお誘いのことです。”にぎやかし”なんて言われますね。苦手な言葉です…
ここで「はいはい」と喜んで出演してしまうと、あなたにのしかかってくるのは経済的な負担(移動費・出演料)に加え、ミスマッチしたお客さんの前で歌うことの精神的負担です。
あなたがまだ「とにかく場数をこなしてパフォーマンスの質を高めたい」段階であれば、このような活動にも得られるものはあります。人前で歌うことこそが今必要な行動だと思えば、にぎやかしでの出演も選択肢のひとつでしょう。
しかし、音楽活動を無理なく、末永く、気持ちよく続けていくには、「自分の安売り」は早い段階で抜け出さなくてはならないステージです。安く見積もられてしまうと、それは連鎖し、「都合の良いミュージシャン/アーティスト」として主催者側にインプットされてしまいます。
一番怖いのは、そのような対応が続くことで、あなた自身が「自分はこの程度(都合の良いミュージシャン)と思い込んでしまうこと」です。
「思い込み」って怖いんです。
あなたが思っている以上に気持ちは態度出ます。卑屈になって自分の価値を貶(おとし)めているミュージシャンには、相応のオファーしか来ません。僕はその状態を長く経験しました。
自分を安売りしないコツ
あなたを安く見積もられないコツはたったひとつ。
「応援されること」
です。
ギャラの有無や額の話ではありません。あなたの音楽性だから呼んでくれるのか、あなたのキャラクターだから呼んでくれるのか、あなたのパフォーマンスのクオリティだから呼んでくれるのか、そういった「あなただから声をかけてくれている」ことが伝わってくる相手からの依頼のみ受けていきましょう。
難しいと思いますか?
たしかに、いきなりこのようなスタンスで音楽をすれば、出演機会を一気に減らすことになるかもしれません。だからこそ、ここまでの章でお伝えしてきた内容ひとつひとつが大事になってくるのです。
応援されるミュージシャンになるには、「イベント主催者/お客さんに喜んでもらえる」ことが第1条件。+αで高い演奏能力、よどみないライブMCなどのパフォーマンスや、コミュニケーション力などが総合的に求められます。これをあなたの個性にして行かなければなりません。喜んでもらえるポイント(あなたを応援する理由)が多いほど、オファーは増えるでしょう。
第1章、第2章でお話した、自己分析やあなたの音楽需要の話と密接に関係してきます。
変なオファーを寄せ付けない
自分のミュージシャンとしてのステージが上がると不思議なもので、「イベントの”にぎやかし”のためのオファー」が来なくなります。
信念を持った活動をし応援してくれる人が増えてくれば、その信念に共感した方からのオファーしか届かなくなるんですね。
このような状態が続けば、”自分の価値を高く売ることができている”と判断できます。自信になりますね。
価値が高まれば高まるほど、相手の方からあなたの価値に見合った対価を提示してくれます。僕もまだまだですが、こちらからお金を払って歌う、という状況は一切なくなりました。本当にありがたいことです。
価格交渉について
出演料(ギャラ)で悩んでいるミュージシャンも多いので、出演時の価格交渉についてもお伝えします。
出演オファーをもらう場合、ギャラが発生する場合が多いです。ギャラの交渉は難しいもので、なかなかこちらの欲しい額を提示するのって気が引けますよね。
僕の場合は、「初めてイベントを企画する」という方からオファーをもらうことが多いので、「ほかのイベントでは平均これくらいの出演料をいただいていますよ」という基準を示してあげると、「じゃ、うちも」となることが多いです。
これはあなたの平均でもミュージシャンの相場でも良いと思います。しかし、「ギャラなんていりませんよ」とこちらから言ってしまうのはアウト。自分で自分の価値を下げることになります。
重要なことは、ギャラを吊り上げることではなくオファーをいただき続けること。この観点で考えれば、主催の方に無理なく、そしてあなたの活動にも経済的ストレスのない金額が導き出せるはずです。
お金をいただくことに慣れきってはいけませんが、いただいたお金以上のものを主催者・お客さんに還元する気持ちがあれば、適正な金額をドギマギせずに提示できるはずです。「(良い意味で)出演料のかかるプロのアーティスト」という印象を持ってもらえることが理想ですね。
交渉がニガテであれば、マネージャーを見つけましょう。
僕は音楽活動にはプロデューサーやマネージャーは必須だと思っていて、こういう交渉事は得意な人にやってもらうのが一番だと思っています。それもあなたを応援してくれる人にやってもらうのが一番良いですね。
ギャラもミュージシャンとマネージャーの人数で割って分配すれば、マネージャーもそのバンド/ユニットの一員です。皆がハッピーになるよう音楽チームを運営する気持ちで活動すれば、モメ事ってそうそう起きませんよね。
応援されていない=価値が無い ではない
もしあなたが今「私は応援されていないから無価値だ」と思うのであれば、それは違います。応援の総数があなたの価値では有りません。
応援されていないことにはきちんと理由があります。
その理由で特に大きなものは、「応援する理由を表現できていない」ことにある場合がほとんどです。あなたのどんな部分を、どんな人に、どのように応援してほしいか、ちゃんと言語化できていますか?そしてそれを表現(発信)できていますか?
人は「応援してください」と言われても、その応援の方法がわからないのです。
具体的にしてほしい応援行動と理由を伝え、理由に共感していただければ実際の行動につながります。この「具体的な表現」ができていないだけだとしたら、本当にもったいないことだと思いませんか?
あなたが発信している情報に具体性が伴っているか振り返ってみてください。価値が無いとなげくのは、やることができているか確認してからでも遅くありません。
まとめ
- あなたの価値にオファーを出してくれる人と付き合う
- あなたの価値を高めるには応援されること
- あなたを応援する理由を言語化し表現する
自分を安売りしてしまう理由を他人に向けているうちは、状況はよくなりません。
あなたを応援する理由、応援したくなる状況を自ら作り出すのが現代ミュージシャンの戦略の1つです。難しく考えず、あなた自身が応援している身近なアーティストについてよく考えてみてください。ヒントが見つかるはずです。