第7章 サラリーマンミュージシャンに誇りを持つ

当手引をお読みの方で、音楽の収入で生活されている方(いわゆる専業ミュージシャン)は少ないかと思います。

僕自身もサラリーマンをしながらの音楽活動をしていますが、「専業の音楽家」になれない・なりきれないことに長年コンプレックスを抱えていました。

お客さん「プロの方なんですか?」
あなた「いやいやミュージシャンの端くれで。食べれていないんですよ…」

などと卑屈になるやりとりを経験したこともあるのではないでしょうか?

コンプレックスを、上を目指すモチベーションにうまく昇華できる方は稀で、たいていのミュージシャンが、卑屈になることで、自分で自分の価値を下げている原因のひとつになっています。

ただ、実際にはサラリーマンやバイトをしながらの音楽活動でも、まったく悲観することはなかったんですね。それどころかメリットもたくさんあります。

目次

サラリーマンであることのメリット

サラリーマンやバイトをしながらの音楽活動には以下のメリットがあります。これは、地元に根差した音楽活動をするには非常に大きなアドバンテージです。

  • 定期収入があり、生活の心配がない
  • サラリーマンの気持ちがわかる

定期収入があることで、コロナという未曾有の事態でも、生活が守られたミュージシャンは多かったでしょう。世界的にエンターテインメント・アートの世界がストップしましたが、専業の方々は本当に死活問題だったと思います。

収入的なアドバンテージもさることながら、サラリーマンだからこそできることに目を向けてみましょう。

僕らの音楽を聴いてくれる方の大半は現役のサラリーマン(労働者)ではないでしょうか?その人たちの気持ちを代弁したり、気持ちに本質的に寄り添えるのは、当事者のみ。その当事者とは、同じ環境で働く僕らなのです。

僕はここに気づくのに何年もかかりました。

・働かずに音楽ができたらもっといい曲が書けるのに
・音楽だけできたらもっと羽ばたけるのに

そんな劣等感を抱いたままの活動は、いつしか自分を意固地にし、周りをライバル視するようになりました。妬み・やっかみから生まれる音楽など、誰を楽しませることができるでしょう。

今生きていることこそ、最良の音楽の種です。僕ら働きながら音楽をしているミュージシャン/アーティストこそ、本当の意味で、ファンやお客さんの「等身大の代弁者」になれる。そう思うのです。

無いものに囚われれず、今手にしているものにフォーカスする

ここから始めると、サラリーマンであることのコンプレックスも随分薄まるのです。

音楽はダブルワーク

ライフワークとライスワークという言葉を知っていますか?

ライフワークとは、夢ややりたいことなどの活動。ミュージシャンなら音楽活動ですね。

いっぽうライスワークとは、いわゆるメシの種。ご飯を食べていくための活動です。

どちらも「ワーク」という言葉が付くことに注目してください。

今、世の中では副業・複業が推奨され、複数の働き方(ワーク)を持つ方が増えています。このような働き方を「ダブルワーク」や「パラレルワーク」といいます。

僕らサラリーマンミュージシャンは、昔からダブルワークだったわけですね!先進的な働き方を随分前からしてきたことになります。

「いやいやダブルワークは複数の収入源を持っていることでしょう」

という横やりは無視しつつ、大事なのは、サラリーマン=本業、音楽活動=趣味だからと区別しないマインドです。

音楽をライフワークとして捉えた時、「お金がもらえるから本業」「お金がもらえないから副業・趣味」という考え方は少し貧弱です。

普段している仕事より、音楽の方がよっぽどお客さんのためになっていることだってありますからね。あなたも、「ありがとう」と言ってもらう数は音楽活動のほうが多いんじゃないですか?

僕は、音楽を本業の位置付けにするダブルワークという考え方が好きです。

これは正社員でもアルバイトでも同じです。今あなたが置かれた状況を精一杯利用しましょう。今しかできないことを音楽活動に盛り込んでください。そうやってある意味「したたか」に活動していくことが、これからのミュージシャンに必要な知恵になるのではないでしょうか。

週末ミュージシャンとして活動していく中では、どうしても音楽を趣味でやっていると受け取られがちです。しかし、周りにどう受け取られても「本業で・本気でやっている」というあなたの意思が、日々の音楽活動ににじみ出てきます。趣味だなんて言わせてはダメで、そう思われるような態度で音楽をしてはダメなんですね。

僕はお客さんに言っていただく言葉は自分で勝手に決めています。

「プロだね」

これです^^

まぁ言っていただけることはそう多くありませんが(笑)

音楽を本業だということに抵抗があるならば、「仕事より大切な趣味」や「人生をかけた趣味」とでも言っておきましょう。重みづけですね。

現状に甘んじてはいけない

音楽活動をダブルワークとして捉えることを推奨しておきながら、1つ”副作用”を警告します。

それは、

「ダブルワークだよ、生涯の趣味だよ」というと、現状を良しとしてしまう甘えが出てくることです。

現状への満足、納得感は幸せなことですが、あなたの目標が専業音楽家など大きなところにあるならば、ダブルワークはステップの1つに過ぎません。目標に応じて、現状をアップデートしていかなければ「それまで」のミュージシャンになります。

ダブルワークということば、考え方には、音楽を収入の柱にできていないコンプレックスを緩和する効果があると同時に、本来の目標が霞んでしまうこともありうることは、理解しておきたいですね。

言葉のかっこよさに惑わされないでください。

まとめ

  • サラリーマンはアドバンテージ
  • 今の状況を利用する
  • 音楽を本業の位置付けにするダブルワーク

考え方ひとつで音楽への意識が変わります。劣等感が成長へのモチベーションになる場合もありますが、そこに楽しみや誇りがなければ長続きしませんし、卑屈になったミュージシャンの音楽を聞き続けたい人もいません。

あなたの音楽活動をワンランクアップさせるために「ダブルワーク」を意識してみてください。サラリーマンという現状に誇りが持てるはずです。

目次